ケガする人

肉離れは自然か、必然か ― 現場で何度も見てきた“その前”の話

ケガは本当に「突然」起きているのか

肉離れや前十字靱帯断裂・損傷など、大きなケガが起きたとき、多くの見る側の人間はその瞬間を切り取って理解しようとします。

担架、交代、検査結果、離脱期間。

そして多くの場合「不運だった」「仕方なかった」という言葉で整理しています。

しかし、現場で身体を見続けていると、その瞬間以前に起きていたことが、どうしても気になってしまいます。


久保建英の肉離れが投げかける問い

先日、久保建英選手が負傷離脱しました。
本人は「強くなって戻ってくる」と前向きな言葉を残しています。

そしてその言葉、心から応援しています。

ただ、現場に関わる人間として浮かぶ問いがあります。

この肉離れは、本当に自然に起きたものだったのか。
それとも、必然に近づいていた状態だったのか。

これは特定の選手を分析する話ではなく、構造の話です。


張りがあっても「動けてしまう」状態の危うさ

肉離れを起こした選手を振り返ると、臨床・現場で見てきた共通点があります。

  • ハムストリングに張りを訴えていた

  • 疲労が抜けきっていなかった

  • それでも本人は「調子がいい」と話していた

特に注意が必要なのが、張りがあっても動けてしまう状態です。

プレーは成立する。
結果も出る。
周囲から止められる理由も見当たらない。

しかし外から見ると、重心が前や横に流れ、姿勢が力んでいるように見えることがあります。

「身体は、すでにサインを出している」


ケガは「日常の延長線上」で起きている

この段階で、必ずケガが起きると決まっているわけではありません。

ただし、起きる可能性が高まっている状態であることは多い。

これを「自然」と捉えるか、「必然」と捉えるか。

その分かれ目は、どこに目を向けるかだと感じています。


平川陽菜の前十字靱帯損傷が示す構造

この構造は、男子トップレベルだけの話ではありません。

WEリーグ・浦和レッズレディース

平川陽菜選手は、公式戦ではなくトレーニングマッチ(TRM)で前十字靱帯損傷を負っています。

TRMで大きなケガが起きたこと自体に、大きな違和感はありません。

なぜならTRMは、

  • 日常の延長線上にあり

  • コンディション調整中で

  • 「万全でも、完全なオフでもない」

身体の状態が最も揺れやすい場面だからです。

強度が低いから安全、高いから危険、という単純な話ではありません。

「日常の積み重ねが、その一瞬に露呈した」
そう捉えています。


肉離れは防げないのか?防げる可能性はあるのか

結論から言えば、肉離れを完全に防ぐことは難しい

ただし、防げる可能性を高めることはできると考えています。

それに必要なのは、

  • 新しいトレーニングメソッド

  • 特別な器具

  • 流行りの予防法

ではありません。


「現在地」をどこまで把握できているか

重要なのは、その瞬間(負傷)より前の身体です。

  • 今、身体はどんな状態か

  • 違和感は本当に無かったのか

  • 「できてしまっている」だけではないか

ケガが起きた瞬間だけを見るのは簡単です。

でも本当に向き合うべきなのは、起きなかったかもしれないプロセスです。

本人や関係者の視点で見たとき、その前段階はどう映っていたのか。

そこを一度、確認する必要があるのではないかと感じています。


その違和感は、本当に偶然だったのか

ケガを「結果」だけで処理しない。

その違和感は、本当に偶然だったのか。
それとも、見ようとすれば見えたサインだったのか。

この視点を持つことが、選手・指導者・トレーナー・フィジオにとって次のケガを防ぐ一歩になると考えています。

  • この記事を書いた人

フィジオセラピストの匠

本気で「結果・変化・効果」を追い求める人を支えるフィジオセラピスト・医療従事者| SNSは簡潔的に、対面は分かりやすく効果的に| 何かあればインスタDMへ

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